国連生物多様性の10年日本委員会 UNDB-Jとは

COP10の成果

生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)は、2010年10月18日(月)~29日(金)の日程で、愛知県名古屋市にて開催され、179の締約国、関連国際機関、NGO等から13,000人以上が参加しました。日本はホスト国として、関係省庁と連携し、愛知県、名古屋市、経済団体等からなるCOP10支援実行委員会の協力を得ながら、生物多様性条約事務局とともに準備してきました。
議長は、ホスト国環境大臣である松本龍氏が務めました。また、10月27日から29日まで開催された日本政府主催の閣僚級会合にも世界各国から主要な閣僚クラスの方々が参加、27日には菅総理大臣が出席しました。

今回の会議の成果として、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書と、2011年以降の新戦略計画(愛知目標)が採択されたことが挙げられます。そのほか資源動員戦略に関する決定の他、SATOYAMAイニシアティブを含む持続可能な利用、バイオ燃料、農業、森林、海洋等各生態系における生物多様性の保全及び持続可能な利用に係る決定の採択、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)、国連生物多様性の10年、2011~2012年運営予算の決定等が行われました。
名古屋議定書は会議ぎりぎりまで各国間の交渉が続きましたが、最終的に議長提案が受け入れられ、30日未明に採択されました。議長国である日本の粘り強い交渉には、各国より高い評価が与えられています。

概要

1.開催期間・場所

2010年10月18日(月)~29日(金)(於:名古屋国際会議場)
(閣僚級会合は27日~29日に開催)

2.参加者・サイドイベント

  1. 締約国179ヶ国、国連環境計画等関連する国際機関、先住民代表、市民団体等13,000人以上
  2. 過去最大となる約350のサイドイベントが開催され、また隣接する会場では「生物多様性交流フェア」が開催され、11万8千人を超える人で賑わった。

3.日本からの参加者

松本龍環境大臣がCOP10議長を務めました。また、日本政府代表団として、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等の担当者のほか、経済界、労働界、NGO関係者が参加した。
また、オブザーバーとして、地元自治体、企業、NGO等が多数参加した。

4.閣僚級会合

議長国である日本政府の主催で、10月27日~29日にCOP10閣僚級会合が開催されました。
27日の開会式では、菅直人総理大臣より、生物多様性保全に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ」が表明された。各国各機関による声明に加え、28日には地元自治体や経済界、NGO、ユース等多様な主体が参加するパネルディスカッションも行われた後、29日の議長総括で締めくくられました。

5.主な成果

(1)新戦略計画・愛知目標(ポスト2010年目標(2011~2020年))
意欲的な目標を求めるEUと、実現可能性を重んじる途上国との間で、最終的には非公式閣僚会合での意見も踏まえて、「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす」との趣旨の文言となりました。
最後まで調整が続いた保護地域については陸域17%、海域10%となるなど、20の個別目標が合意された。中長期目標(「自然との共生」)については、「2050年までに、生態系サービスを維持し、健全な地球を維持し全ての人に必要な利益を提供しつつ、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用される」ことが合意され「愛知目標」として採択されました。
(2)遺伝資源のアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書
「COP10までにABSに関する国際レジーム策定交渉を完了する」との2006年のCOP8(第8回締約国会議)での決定に基づき、会議の開催中での非公式協議会合(ICG)において、ABS議定書案の検討が行われました。最終日に日本からの議長案を提示し、同案が「名古屋議定書」として採択されました。また、議定書の発効に向けた政府間委員会の設置やその作業計画が決定された。
名古屋議定書は「海外の生物資源を利用する場合に資源保有国から事前合意を得なければならないこと」、そして「生物資源の利用によって得られた利益の資源保有国への還元が必要であること」をとりまとめたもので、今後1年間(2011年2月1日~2012年2月1日)の署名期間中に、50か国の署名を集めた後、国連事務総長に批准書が寄託されてから90日後に発効する予定です。
(3)資源動員戦略
2008年の第9回締約国会議(COP9)で決定された「資源動員戦略」のフォローアップのためのもので、焦点は、「戦略」の進捗状況をモニターするための指標と目標でした。途上国側は、具体的な金額目標(官民全てのかつ世界全体での資金フローについての目標)の明記を強く求めたが、先進国側は、しっかりとした指標無しにそのような目標を設定するという議論に応じられないとし交渉が難航。
最終的に、途上国側は具体的目標の要求を取り下げ、「しっかりとした指標ができるなどの条件で、COP11の際に目標を採択する」「条約の三目的達成へ貢献するため,2020年までに途上国への毎年の国際的資金フローを増加させるという目標を発展させることを検討する」旨の決定が採択されました。
(4)持続可能な利用
ブッシュミート(食用の野生鳥獣等)の適正な利用、アジスアベバ原則・ガイドラインの実施、SATOYAMAイニシアティブの推進などを含む決定が採択されました。SATOYAMAイニシアティブについては、19日に発足した「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」を、このイニシアティブ推進のためのメカニズムと位置付け、各国・機関等の参加を呼びかけ51の国や機関等が創設に参加しています。
(5)バイオ燃料と生物多様性
バイオ燃料の生産及び使用は、食料やエネルギーの安全保障を含む社会経済的状況に影響を及ぼしかねないことが認識され、その負の影響を最小化するため、バイオ燃料の生産に適した又は不適な土地を適切に見極めること、次世代バイオ燃料の生産に使用され得る合成生物学とバイオ燃料に関する情報提供を行うこと等が決定されました。
(6)海洋と沿岸の生物多様性
生態的及び生物学的に重要な海域(EBSA)については、締約国やFAO等の関係機関等と協力し、資金が利用可能であることを条件に、一連の地域ワークショップを開催し、EBSA設定の基準の適用に関する理解の向上を図るとともに、その際に得られる科学的及び技術的情報並びに事例の集積を行うことをCBD事務局に対して求めること。また、海洋生物資源についても、生物多様性に配慮して持続的に利用するための適切な措置をとるよう各国に促すことなどが決定された。
(7)気候変動と生物多様性
森林の減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)の活動に関する生物多様性の保全措置や生物多様性への影響評価につき、生物多様性条約事務局が気候変動枠組条約での決定を予見しない形で助言や検討を行うこと、2012年の国連持続可能な開発会議(RIO+20)を見据えた他のリオ条約(気候変動枠組条約及び砂漠化対処条約)との共同活動の検討を行うことが決定された。
(8)多様な主体との協力
ビジネスと生物多様性について、締約国によるビジネスと生物多様性の連携活動の推進の招請、民間部門による具体的な参画の奨励、国レベル・地域レベルでのビジネスと生物多様性イニシアティブや国際的な連携をイニシアティブ間で図るためのグローバルプラットフォームの設置の奨励等が採択された。
また、2011年から2020年までを対象とする、地方自治体の生物多様性に関する行動計画を承認するとともに、締約国や他の政府機関に対し、同計画の実施を奨励した。
(9)COP11の開催
最終日の29日(金曜日)に、2012年10月1~5日にカルタヘナ議定書第6回締約国会議を、8~19日に生物多様性条約第11回締約国会議をインドにおいて開催することが決定された。

6.日本の取り組み

日本は、ホスト国として、会議開催の準備を積極的に実施しました。会期中も菅総理大臣より、生物多様性保全に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ(20億ドル)」、松本環境大臣より右イニシアティブの下で生物多様性国家戦略の策定支援等に向けた「生物多様性日本基金(10億円)」、ABSに関する途上国の能力構築等に向けた支援(10億円)及び伴野外務副大臣より遺伝資源、森林保全に関する具体的な支援策を表明しています。
また、松本環境大臣によるCOP議長として各国との調整も大きく評価されました。